エクササイズって健康的?
「2週間で腹筋を手に入れる方法」
「座ったまま二の腕と背中を細くする」
「これだけでOK!全身マジ痩せHIIT」
「下半身痩せエクササイズ」
「脚が痩せてお腹も引き締まる飛ばない立ちエクササイズ」
「食後にこれやるだけで痩せた!」
これ、何だと思いますか?
YouTubeで「エクササイズ」と検索したら、ずらっと出てきたエクササイズコンテンツのタイトルです。
そして、どう思いましたか?
「わー、これ、よさそう」
「これなら、簡単そう」
「こんな短期間で結果が出るなら、やってみようかなー」
20年前の私は、これらのタイトルを見て、間違いなくこんな風に思ったと思います。
そして、実際に、その頃はYouTubeなんてなかったけれど、女性ファッション誌に掲載されている「痩せるエクササイズ」特集などを参考にしながら、スクワットだとか有酸素運動に励んでいた時期もありました。
そして、今はどう感じるか?
正直ゲンナリです。
痩せる、激痩せ、痩せすぎ注意、引き締める、痩せる、くびれ………………
これらのタイトル全てが「見た目を変える」ためのもの。
そして、それらの見た目の全てが「サイズを小さくする」ためのもの。
ものの見事に、健康な体づくり、強い体づくり、などを筆頭に掲げたコンテンツは見当たりませんでした。
もちろん、もっと検索を続ければあるのでしょうが、トップに上がってくるのがこういった体型に絡んだタイトルのものたちだったということです。
そもそも、エクササイズって何のためにするのでしょうか?
スタミナや持久力を上げたいから?
筋力をつけたいから?
病気、怪我予防のため?
スポーツやパフォーマンスを向上させるため?
マインドフルネス、精神的な自信や健康のため?
体重、体脂肪を減らすため?
ボディメイクのため?
単純にエクササイズが楽しいから?
正解なんて決してないし、これらのいくつかが目的かもしれないし、これらすべてが目的かもしれません。
エクササイズの目的は人それぞれです。
私は、年齢を重ねても体の外からも内からも痛かったり苦しいところが可能な限りなく、できルだけ長くできるだけ制限なく動ける体でいたい、自分の心と体をケアしてあげたいからエクササイズをしています。
今はもう、体型や体重のためにエクササイズはしていません。
でも、間違って受け取られて欲しくないのは、何もボディメイクのためにエクササイズをすることを否定しているわけでもなければ、自分自身、体型をちっとも気にしていないというわけでもないということです。
自分の好きな体でいられることは気持ちがいいし、仮にその自分の好きな体を褒められることがあるとすれば、素直に嬉しくもあります。
でも褒められるのはおまけの部分で、もし自分の体型をけなす人がいたとしても、それはそれでいいんです。
身長が高すぎる、低すぎる
太すぎる、細すぎる
ムキムキすぎる、貧相すぎる
胸が大きすぎる、小さすぎる
長すぎる、短すぎる
黒すぎる、白すぎる
…
この世は、容姿や体型をジャッジする言葉で溢れかえっています。
人からネガティブな言葉を浴びせられれば、決して愉快な経験ではないのは確かです。
時に、ネガティブな言葉、というのを通り越して、すごく意地悪で陰湿な言葉や言い方も残念ながら存在するのも確かです。
そういうことが嫌で自分を変えたい、というのも分かるんです。
でも、そういった他人の評価を受ける度、自分の容姿や体型を変えていくのでしょうか?
しかも、好みや美的感覚は人それぞれ異なるし、同じ人物であっても時と共に移り変わっていく全くあてにならないものです。
他人は無責任に好きなことを言って去っていけるけれど、自分の体は自分が死ぬ瞬間まで付き合っていくことになる大事な体。
自分が責任者である体を、他人の無責任な意見を反映して変えようとするのは間違っているし、幸せなこととは思いません。
私が若い頃、当時は「細い体」がトレンドでした。
ファッション雑誌の表紙をキラキラ飾るのは、こぞって細い体のモデルたちで、細いと「スタイルいいねー」と言われる時代でした。
私は些細なきっかけでダイエットを始め、当時の流行の細い体を手に入れ、人からチヤホヤされるようになった時期がありました。
思春期に身長が高いことで、からかわれた経験から体にコンプレックスがあった私にとっては、人からチヤホヤされる人生初めての経験は気分を良くしてくれ、なんだか認められたような気にもなり、それが自信にもなりました。
ところが、、、幸せとは違うんですね。(その後、摂食障害に陥ったこともありますが)
全然、心がほんわりあったかい気持ちで満たされるような、人生に感謝したくなるような、そんな気持ちで毎日を過ごしていませんでした。
むしろ、その逆でした。
流行の体を手に入れたから、次は維持し続けなきゃ、と追われる思い。
私は、本当に自分がなりたい体になったわけではなく、当時の世間一般に受け入れらやすい「美とはこう、あるべき」という価値観に応えようしていただけでした。
その時は、そんな風に流されているとは思わず、「〜なりたい=自分の願望」としか思っていませんでしたが。
とにかく、そんな脅迫的動機から体型維持しようとする工程は、全然心がワクワクするはずも楽しくもなく、他者からいいねと言ってもらって得られる他者承認の感覚も一時的には気分を良くしてくれても本当の幸せとは違いました。
そして、無茶な食事制限による摂食障害という「ツケ」や体に起こった不調は、当然他の誰でもない自分に返ってきたのは言うまでもありません。
私は、今、きっと世間一般受けしない体型をしているんだろうと思います。
特に太ももは筋肉がついて、デニムにしたって大きいサイズかゆるゆるデニムしか履けなくなりました。
セルライトだって、ストレッチマークだってあります。
でも自分の体が今までの中で一番好きです。
誰に何と言われようと、仮に少し嫌な思いになったとしても、それによって自分の体を変えたいとはちっとも思いません。
そして、体型が加齢だけでなく人生に起こる色んな出来事によって、この先どんな風に変わっていっても変わらず自分の体を好きでい続けると思います。
それが自分の心と体の両方を大事に労ってあげた結果の体であるのならば。
私がなぜ冒頭で、外観(特に痩せる引き締める)を謳い文句にしたコンテンツにゲンナリすると言ったのか…。
ゲンナリというよりか、心配といった方が正しいです。
何度も言いますが、ボディメイクがエクササイズの理由の一つにあったって全然いいと思うんです。
先に言ったように、他者承認が絶対的な幸せを与えてくれるとは思いませんが、ボディメイクの結果、人から褒められて自信がつく、というポジティブな結果が得られるのであれば、それはそれでいいことかな、とも思います。
ただ、私が憂えるのは、そういった「痩せる痩せる引き締める‥」コンテンツで溢れかえっている現状が、
「エクササイズと言えば、カッコイイ、綺麗な体を作るため、
カッコイイ、綺麗な体と言えば、細い、引き締まった体」
というような偏った価値観をどうしても煽ってしまいがち、ということです。
特に、昔の私のように若い女性は、そういった風潮に影響を受けやすいとも思います。
私は、ふっと思うんです。
エクササイズって健康的な響きがあるけど、果たして健康的なのかな?と
細い体がトレンドの時は、ダイエットブーム。
ダイエットによる摂食障害や弊害、健康被害などが表立ってくるようになって、細い体から引き締まった体がトレンドになりつつある近年は、筋トレ、痩せるエクササイズブーム。
…これって、方法がダイエットからエクササイズにすり変わっただけ?!と。
時に、エクササイズにまるで依存しているかのように見える人さえ見かけます。
食べた分、エクササイズで取り戻さなきゃ!というように。
痩せるために運動しなきゃ
食べすぎたから運動しなきゃ
自分の〇〇の部分が嫌いだから運動しなきゃ
何かに追われてするエクササイズ、その時々のトレンドの体型、ボディイメージを追い求めてのみするエクササイズは、あまり楽しそうに見えないし、精神的に健康な状態を保ったまま長続きしそうとは思えないんです。
私はただ単純に、一人一人がどんな体型であっても自分の体を唯一無二の体で魅力的と思ってほしいし、自信を持ってほしい。
自分の体のどこかの部分が嫌いだからエクササイズをするのではなくて、自分の体を好きで大事に労ってあげたいから、エクササイズしてほしい。
極論を言えば、エクササイズを始める最初の動機は、別に見た目のためだけだっていいんです。
でも、続けるうちにエクササイズは見た目を変えるため以上に、健康で強い体づくりを含めて人生を豊かにすることができるパワーも持ったツールだという風に思う人たちが増えてほしいと願っています。
もし、あなたが今ボディメイクのためだけにエクササイズをしているとするならば、そのなりたい体は本当にあなた自身が望んだなりたい体ですか?
エクササイズをすることによって、日々幸せな気持ちを得られていますか?